のし-熨斗のデザインの違い
のし紙やのし袋の熨斗のデザインは、慶弔用品メーカーによっても異なりますが、大きく分けて東日本と西日本によって様式が異なります。
東日本の熨斗は濃紺色に黄色の松竹梅を簡素化して配したデザインが多く、江戸の粋(いき)の流れを汲んだもの。西日本の熨斗は松竹梅と鶴亀をモチーフに多色刷になっているのが特徴で、京の華ぎ(はなやぎ)の流れを汲んだデザインが多いです。
熨斗の配置箇所も東西で異なり、東日本は熨斗が水引に掛かっていますが、西日本の場合は水引から離れた位置に熨斗がデザインされています。
東日本様式が、左右に結ばれた水引に挟み込む形で添えられていた本来の熨斗の取り付け位置に近いデザインであるのは、古来からのしきたりを出来るだけ踏襲したいとの考えから、反対に、西日本様式は新しい慶弔文化を作り育てようとする考えから発祥しています。
のし-熨斗の由来
金封についている熨斗や、のし紙やのし袋に印刷されている熨斗は、元々は白い和紙の上に赤く染めた和紙を重ね合わせ、束ねた伸し鮑を包んで水引で止め結んだもので、祝賀の贈答の際に贈り物に添えて用いられていたものが、後に疑似簡素化したものです。
←左は擬似簡素化された折り熨斗・右はデザイン化された熨斗
「熨斗」という呼称の由来は、鮑を伸して作られたことからくる「伸した鮑」が、「熨斗鮑」に転じ、省略されて「熨斗」となったという言い伝えと、儀礼作法の包み方の一つに伸し鮑の包み方を「熨斗折り」と称したものが「熨斗」に省略されたという二つの言い伝えがあります。
日本は昔から海の幸に恵まれ、特に鮑は重要な食物で古来より神事のお供え物として用いられてきました。
伸して干した鮑は、栄養価が高く長持ちすることから中世には武家の出陣や帰陣の祝儀に用いられ、戦場の貴重な保存食ともなりました。江戸時代には長生き長持ちの印と重宝がられ、祝事や慶事の儀式に高価な贈答品として用いられるようになりました。
こうした時代の移り変わりと共に前述の和紙に包んだ「熨斗」を贈答品に添える風習が根付きました。
鮑は元々なま物なので、贈答品がお祝い用であっても、なま物(肉や魚貝類=貝類・鮮魚・精肉・鰹節など)が重なることを嫌い「熨斗」は付けません。また、元々お目出度い贈答品に用いられていたため、弔事全般、病気見舞い、災害見舞いなどには、熨斗は付けないことになっています。